日本経済新聞(夕刊) 2001年1月29日 p15
MBA レポート

「入学事情は人それぞれ」—- 米国個性豊かな女性たちと学ぶ

コロンビア・ビジネススクールは、有力校の中でもリベラルな校風で知られ、女性も多い。1学年およそ600人。その四割近くが女性だ。私が所属するクラスには63 人中20人の女性がいるが、皆、個性派ぞろい。ダンサー、コンサルタント、政府職員など様々な経歴を持つ女性たちが、それぞれの志を抱いて共に学んでいる。
最年少は、22歳のタイ人女性。そして最年長のキャロリン・パリスさん(48)は元金融専門の弁護士。ニューヨークでも大手の法律事務所の重役だった。ビジネススクールに来たのはインターネットの出現がきっかけだ。
「ネットは金融と法のあり方を変える。一から勉強したい」。2年前、コロンビアの社会人コースでコンピュータ・サイエンスを学び始めたが、これが法律より面白くなってきたという。
「最初はこの年齢で新しいことが学べるのかとても不安だった。でもがんばったら成績もAがとれて、とても自信がついたの」。その後、ビジネススクールに挑戦し、合格。「確かに若い時のほうが覚えるのは早かったと思う。でも今は、より大きな枠組みで物事をとらえられるので、年齢はマイナスとは思わない」
22年勤めた法律事務所に未練はない。卒業後は、ソフトウエア関係の仕事につきたいという。MBA(経営学修士)は48歳の再出発となった。
アリソン・ブルメンタールさん(29)にとってのMBAは、二人の子供を育てていくのに必要不可欠な資格だ。アリソンさんはシングル・マザー。22歳で学生結婚した夫とは数年前に離婚した。
夫が精神的な問題を抱えていると知ったのは、結婚してまもなくのことだ。夫は仕事も人生もうまくいかないと暴力を振るい始め、給料も渡さない。アリソンさんはパートで調査の仕事をしながら子供を育てた。3年間我慢したが、最後は殺されかける思いをして、実家に逃げ帰った。
両親の援助を受けながら、必死に自立への努力を始める。投資会社でアシスタントとして働き始め、夜は専門学校で学びながら資格を取り、2年でマネージャーにまで出世した。MBAはその延長線上にある。「教育や資格は、私の人生に大きな可能性を与えてくれた。将来は、人の助けになるような教育関係の非営利団体を設立したい」というアリソンさん。それから「ビジネススクールでいい人にも出会えたので、結婚するかも」とうれしそうに語った。
彼女たちと接すると、私にとってMBAは何なのかを考えさせられる。三十歳でマスコミ大手を退職。留学は大きなかけだった。でも後悔は全くしていない。「メディアを通じて世界の人たちの心を豊かにしたい」。この思いをさらに大きく実現させたいから。
(ニューヨーク在住 佐藤智恵)

*この記事を書かれた佐藤さんは、インターフェイスで学んでいらっしゃいました。