アントレプレナーシップについて
UCLAアンダーソン・スクール、ウィリアム・コクラム助教授とのインタビュー





UCLAアンダーソン・スクールについて

BusinessWeek誌調査(98年10月)で「学生満足度」分野のランキング一位
就職相談課(placement office)のサービス度一位
学生のサマー・インターン–卒業後の正式採用先を探す際の重要なステップ–斡旋に関して優れた実績を残してきている
全般的な学生間の雰囲気はフレンドリーで「他者を蹴落としてでも・・・」といったエゴイスティックさは見られない
入学競争率は極めて高く、とりわけ日本人学生選考に際しては、聡明で熱意溢れチームワーク志向、コミュニティ活動に積極的に参加し、コミュニケーション能力に秀でた者を優先している。つまりペーパーテストで点を取るのは上手だが、自分の意見をはっきりといい参加型のクラス・ディスカッションやグループ・ワークにおいて貢献するのが苦手なタイプの志願者は、たとえGMATの点数が高くても重視されない。
アンダーソンには「アントレプレナーシップ」の分野でたいへんに優れた教授が二人在籍している。ウィリアム・M・コクラム氏とS・ウィリアム・ヨスト氏である。アントレプレナーシップの分野で同校プログラムが全米トップクラスの評価を得ているのも、彼らの存在を考えると、驚くにあたらない。

ウィリアム・コクラム氏について

コクラム氏は教育者として数多くの受賞経験を持つ。BusinessWeek誌の1996年調査では、アントレプレナーシップの分野でトップ・プロフェッサーの評価を獲得。過去10年以上に渡り同校でケース・スタディ式の起業ファイナンスのクラスを教えて伝説的な存在となった。彼の授業では新規企業立ち上げの際に必要な資金の調達・保持に関するすべての事柄を教えている。

UCLAで教鞭をとる前は、投資銀行業界で25年を過ごし、最終的には3000人の人員を擁するベッカー・パリバス社のcorporate officer capacityを勤めた。1984年に同社がメリル・リンチに買収された際、コクラム氏は実業界を離れアンダーソン・スクールでの教師生活を開始。アントレプレナーとして成功するために求められるビジネス及びファイナンスのスキルを学生に教えること第二のキャリアをはじめた。彼はまたコンサルタントとして、組織論、戦略、マーケティング、ファイナンス、アドミニストレーションといった問題について、さまざまな産業分野のCEOたちにアドヴァイスも行なっている。.

ウォーレン・J・デヴァリエについて

株式会社インターフェイス社長ウォーレン・デュバリエーは、シティバンク、エクソン、チェース・マンハッタン投資銀行といった米国企業で、約二十年に渡り、商業銀行業務、投資銀行業務、コーポレイト・ファイナンス、ジェネラル・マネージメント等の経験を経たのち、1988年に同社を設立。

これまでに歴任したポジションは以下のポストを含む:チェース・マンハッタン投資銀行マネージング・ディレクター兼コーポレイト・ファイナンス・ディレクター(ニューヨーク)、ジェネラル石油マネージング・ディレクター(東京)、エッソ・イースタン社ファイナンス・マネージャ(テキサス州ヒューストン)、エッソ・チリでのジェネラル・マネージャ(チリ、サンチアゴ)その他。

現在は日本記者クラブおよび米国商工会議所(American Chamber of Commerce in Japan)会員でもある。

アントレプレナーシップについて
デヴァリエ : アントレプレナーシップを教えるコースは各ビジネススクールでとても人気が出ています。このトレンドを生み出している要因はいったいなんでしょうか?

コクラム : アントレプレナーシップとは「機会(opportunity)あるいは改善(improvement)を追い求めること」です。この考え方が世界や各組織あるいは個々人の生活をより良いものとしているので、みなさんの心を捉えているのでしょう。またこれはあらゆる対象、たとえば教会、非営利団体、大企業などをおよそすべての組織を運営することに応用できるものです。逆にいえば、アントレプレナーとは別にハイテク分野に限ったものでなく、いろいろな環境にはそれぞれ起業家精神に溢れた人がいるといえるかもしれません。ですから、これはビジネスだけに限定されるコンセプトではなく「大きな成長が望める環境で改善を計る」という人生に対するコンセプトなのだ、と考えています。

デヴァリエ : アンダーソン・スクールの学校案内をめくると、「グローバルな情報社会に活躍が期待される知的資本ならびに起業家精神に溢れたリーダーを創造しています」とのメッセージがまず目に飛び込んできます。この「ミッション・ステートメント」について詳しくご説明願えますか?

コクラム :「我々は何者であるか?」を簡潔に伝えるために、このメッセージが考えられたのです。まず「知的資本を創りだす」とは、マネージメントに係わる新たな知識、理論、応用研究を作り出すこと、ならびに卒業生が実社会に出て営利/非営利組織の運営に関わったときのためにそのマインドと思考をより優れたものにしていくことを指しています。また起業家精神に溢れたリーダーを養成することについては、まず自らがリーダー役を果たそうな「改善の余地」を「組織の文脈」のなかから見つけ出す、そうした方向へ学生の皆さんの意識を向けさせる授業を通常のMBAならびにエクゼキュティブMBAプログラムで提供して、これを実現しようとしているのです。さらに、ダイナミックな学習環境を提供して、学生の皆さんがグローバルなスケールでの技術革新を想像したり、あるいはさらに有効なインフォメーション・テクノロジーの企業戦略への活用法を見つけ出してくれるよう刺激を与えています。

デヴァリエ :アンダーソンでアントレプレナーシップを学んでいる学生の割合はどれくらいでしょうか?

コクラム :およそ全体の80%が何らかの形で関わっています。1999年卒業予定のフルタイムMBAのうち80&にあたる260人の学生が「アントレプレナー・アソシエーション(EA)」という学生団体の(メンバーシップフィーを払った)会員となっています。

また別の指標をあげると、98-99年度にはアントレプレナーシップに関わる全てのコースを合わせると1060の座席数が学生に用意されていました。そのうち4つのコースを「専攻」と考えると、上記の数字と同じ260人がアントレプレナーシップを専攻したといえます。ただこの数字はパートタイムの学生も含めてのものですから、実際はこのパーセンテージより少し少ない人数となるでしょう。

アンダーソンで学ぶ学生は二年間で11の選択科目を履修することができます。そのなかでアントレプレナーシップと他の分野(たとえばマーケティング、ファイナンス、ビジネスストラテジーなど)とを併せて学ぶ学生も数多くいます。

さらに別のデータをあげると、私の教えるコース「Financing the Emerging Enterprise」には昨年320人の学生が登録していました。また「Entrepreneurship and Venture Initiation」のコースは210人でした。

デヴァリエ:アンダーソン・スクール卒業生のうち、自ら事業をはじめる者、あるいはヴェンチャー企業に就職する者の割合は、何パーセントくらいでしょうか?

コクラム:卒業時にはフルタイムの学生のうちおよそ70%が大企業に就職し、残りの約30%がヴェンチャー企業へと進んでいます。その後一年経ってみると、大企業で働いている者の割合は65%に、またヴェンチャー(を含む小規模)企業で働く割り合いは35%に変化します。さらに卒業後5~10年が経過するとこの割合は6対4へとなります。そして15年後には5対5です。こうしたトレンドは年月が流れるにつれてもっと進んでいくと予想していますが、まだその追跡調査の結果はありません。

このトレンドが進む理由は「学生は、官僚的な風土をもつ大企業のために働くのではなく、それぞれ自分の人生や運命を自分の手でコントロールしたい(Students want to control their own destiny rather than work for large bureaucracies!)」と欲しているからだと思います。

当校の全卒業生約28000人のうちの40%がヴェンチャー企業にいると仮定すると、在校生には10000人を越える起業家へのアクセス(するチャンネル)が存在することになります。さらに関連する数多くの「サービス・プロバイダー」–ヴェンチャー・キャピタリスト、投資銀行家、アカウンタント、弁護士他、ヴェンチャー事業に関連したビジネスを行なう人々–とも出会う機会があります。これにより自ら事業を立ち上げる際に助けとなりそうな企業・個人と在学中からネットワークつくりを行うこともできるというわけです。これに加えて当校が築いてきたロサンゼルス-サンフランシスコ・ベイエリア/シリコン・ヴァレーをカバーする強力なネットワークもすでにあり、これを効果的に利用することも可能でしょう。

自分で事業を起こしたり、キーとなるメンバーとしてヴェンチャー企業に加わったり、あるいはフルタイムの仕事を別に持ちながらヴェンチャー企業に初期段階で投資を行ないその役員会に名を連ねて運営に手を貸す人々も、アンダーソン卒業生には多く存在しています。そうした次第で、アントレプレナーシップに重大な関心を寄せる在校生は、さまざまなかたちで自分の興味を現実のものとしてきているわけです。

われわれが学生のみなさんに伝えようとしているのは、まず「アントレプレナーとはひとつの信仰のシステムであり、大企業、小規模企業、スタート・アップ、ファミリー・ビジネス、非営利団体を問わず、この考え方が応用できる」ということです。具体的には、官僚主義的な障害を乗り越えて何かを達成できる、また手持ちのリソースの多少に関係なく何かを実現できると信じる「心構え(attitude)」なのです。つまり、非営利団体の運営に関わる経営責任者が何か新しい収入源をつくりあげたとすれば、彼は「起業家」といえます。科学者といっしょになって新しい事業を立ち上げた経営者も「起業家」と呼び得るでしょう。ある企業を年商$20 millionから$5 billionまで成長させた経営者は、自社がいかに大きくなろうと起業家精神に溢れる社風を保つ方法を見つけるかもしれません。彼の場合も「起業家」です。さらに、インテル社(のような、すでに大企業となっている会社)の新規部門の一員で責任ある立場にたつ者も起業家たり得ますし、投資銀行家、ポートフォリオ・マネージャー、ヴェンチャー・キャピタリストといったビジネスに携わる者でも、「これまではいつもこうしてきたから・・・」といった型にはまったやり方を拒否し、もっとよいビジネスの進め方を求めて、金融サービスの分野に新たなアプローチを持ち込む人たちは、これもまた「起業家」と呼ばれる資格があると考えます。

デヴァリエ:起業家としての活動で、成功の決め手となる重要な要因は何だとお考えですか?

コクラム:それはすべて「個人」の資質や考え方や振舞いによって決まるものです。まず、起業家は常に最終的な目的をはっきりと見据えている必要があります。つぎに、彼(女)は大きなアイデアから具体的なディテールに至る、すみずみにまで気を配らなくてはなりません。もととなるビジネスプランだけを考えて、日々のオペレーションは他人任せ・・・というふうにはいかないのです。また「ピープル・スキル」と呼ばれる他者とのコミュニケーション能力の点でも優れていなくてはなりません。これは単に「部下をどう使うか」ということではなく、社内・社外を問わず、他の人たちと上手に協力していくために必要なスキルだからです。さらに、いつも活力に溢れ、苦しい局面で耐え抜く強さも必要です。そして最後に、これは何よりも重要なことですが「曖昧な状態に耐えられること」「不確実な状況でも慌てたり焦ったりしないこと」そして「リスクをマネージするスキル」が、成功を収めるために必要となります。

デヴァリエ:そうした要因のなかで、いちばんよく見落とされているものは、どれでしょう?

コクラム:一番は「ピープル・スキル」ですね。同様に、最終的に目指すべきゴールから目をそらせ、そこへたどり着く方法や手順ばかりに気を取られ、結局目標を見失うケースも多々見られます。また、リーダーが部下には自分と同じスキルが備わっていると(無意識に)考えてしまうこともよくある間違いです。ですから「ある者がリーダーとなり、他の人が部下となっているのには、それなりの理由がある」という当たり前のことを、改めて肝に銘じなくてはなりません。

デヴァリエ:アントレプレナーシップには、文化的な要素といったものが関係しますか?つまり、社会/文化によってそれぞれそのなかで成功する起業家というのは異なるものなのでしょうか?たとえば米国で起業家として成功するためには、米国文化に固有の何か特別な能力が必要となってくるのでしょうか?

コクラム:文化によって制限されるものというのは思い当たりません。ご承知のよう
に、どんな場所・文化のなかにいる起業家も、自分の活動するマーケットを理解していなくてはなりません。各々の国のマーケットはその文化によって異なりますので、その特質を理解するという意味では、文化による違いはあるでしょう。たとえば政府の関わる事柄(規制や法律など)や制度的な事柄(銀行、教育、政治など)が文化によって違いを生じる代表例です。

デヴァリエ:アントレプレナーシップを教えるにあたって、実際に起業家として得た経験はどれくらい重要なことなのでしょう?

コクラム:自分の経験というのは役に立ちます。事業の立ち上げプロセスが実際にどういうものかを見てきているので、それを学生に説明しやすいのです。アンダーソンではアントレプレナーシップについて14のコースを設けていますが、そのほかに実際的な経験を積むためのプログラムといっていいものが25あります。アントレプレナーシップを理解したい学生は、こうしたプログラムに参加して、在学中からそれを学ぶこともできるのです。

ただし、この25の実際的なプログラムに参加する学生のみなさんは、すでに起業家となっている人たちと上手に交流し話をしてみて、現実にアンプレナーとはどんな人たちか、また事業を立ち上げるとはどういうことなのかを、彼らから聞き出し感じ取らなくてはなりません。はたして自分が決断を下すのに必要な情報が望ましい状態の60%しかないなかでストレスなく働くことができるか、成功の確率が高くはないことを覚悟してそれでもリスクを負うことができるか、急速な変化が起こり続ける環境下で時間的な制約から多くのことを自分以外の人間に依存しなければならないことに耐えられるか、などといったことを彼らの話を元によく見極めなければならないのです。

デヴァリエ:アンダーソンでアントレプレナーシップを専攻する「典型的」な学生のカリキュラムはどんなものか、ご説明願えますか?

コクラム:厳密にいえばアンダーソンではアントレプレナーシップを「専攻分野」としては設けてません。代わりに選択科目を設け、それにより学生のみなさんがアントレプレナーシップに焦点を絞って学習できるようにしています。MBAで学ぶ学生はマネージメントのコア科目を修了する必要がありますが、これは10の必須科目と14の選択科目、併せて24コースからなるものです。このプログラム構成で、学生のみなさんに豊富な学習の機会を提供可能としているのです。つまりアントレプレナーシップに焦点を当てたものだけでなく、他の学術分野も学べる選択肢がある、ということです。またアントレプレナー・コースでは、教室での授業に加え、吟味された職場でのインターンシップと念入りに実施されるフィールド・スタディを経て、全体の学習を完了するようになっています。

アントレプレナーシップを学ぶ典型的な学生は、10のマネージメント必須科目に加え、選択科目を選ぶわけですが、こちらは次のような実に多岐に渡るコースが用意されています。

“Entrepreneurship and Venture Initiation”
“Small Business Management”
“Corporate Entrepreneurship”
“Elements of Economic Organizations”
“Doing Deals”
“Financing the Emerging Enterprise”
“Managing Entrepreneurial Operations”
“Entrepreneurship and Business Plan Development”
“Managing the Stages of Entrepreneurial Growth”
“Issues in Operating a Family Business and Closely Held Firms”
といったコースです。

フィールド・スタディは、アンダーソンではカリキュラムのなかに完全に組み込まれた存在です。アントレプレナーシップ専攻の学生が取り組むプロジェクトとは、次のようなものです。2年目にある”Management Field Study”は2つのクォーターに跨って行われますが、そのなかでは学生たちがチーム単位で、営利企業その他の組織が抱える「実社会」での問題を解決します。授業他で学んできたことをフルに活用して自主的に進めていく、集大成ともいえる経験です。ふつうは異なる分野を専攻する複数のメンバーが集まってチームを組みます。

指導教授の助けをかりながら、各チームはポリシーレベルの研究を行い、それをもとに具体的な実施推薦項目を作成します。結論は要約の形でレポートに記されますが、これはチームメンバー全員を包括的に審査する最終試験としてもちいられます。

デヴァリエ:UCLAのHarold Price Center for Entrepreneurial Studiesは、アンダーソン・スクールでのアントレプレナーシップ研究をまとめる包括組織のようですが、将来起業家を志す学生は、Price Centerを通じて、どのような財政的支援を受けられるのでしょうか?

コクラム: Price Centerでは起業家志向の学生が経験を積み資金調達が行えるよう、以下のような制度を設けています。

The Knapp New Venture Competition
New Venture Competitionでは、ビジネスプランをきちんとプレゼンテーションする、文書作成及びプレゼンテーションのスキルを磨く、すでに成功を収めているヴェンチャー・キャピタリスト、銀行家、その他の投資家から批評を受ける、などの機会を提供しています。企画提案書は、そこに盛られたアイデアのオリジナリティと、プロジェクト遂行のための事前調査および実現可能性の完成度によって審査されます。そして、最終選考に残った者は、数千ドルの賞金をシェアすることになります。

Price Institute Fellowship
Price Institute for Entrepreneurial Studiesでは、アントレプレナーシップ研究の分野で際だった将来性と関心を示した学生一人または二人に対して、賞を与えています。受賞者はMBA一年目の最後に選ばれます。

Patrick J. Welsh Fellowship
Welsh Fellowshipへの応募者は、優れたリーダーと成りうる資質と、さらに自ら事業を始める、成長中の企業で働く、あるいはヴェンチャー・キャピタリストのように起業家と共に事業を経営するなどして、アントレプレナー的な環境で働く意欲を示さなくてはなりません。財政面でのニーズも考慮の基準となります。毎年複数のフェローシップが授与されています。なおこのフェローシップはWelsh, Carson, Anderson & Stowe社の創業パートナーの一人でアンダーソン卒業生(69年度)のPatrick Welsh氏によって実現したものです。

Deutschman Venture Fellowship
Venture Fellows Programでは、ヴェンチャーキャピタル・マネージメント、ベンチャー企業への投資トレーニング、起業運営の経験などについて、MBA学生に実践的なコースを提供しています。このフェローシップに選ばれた学生は、スポンサー企業であるヴェンチャーキャピタルあるいは資産運用会社で夏期休暇中に3ヶ月間インターン研修を行います。学生への財政的支援はDeutschman Venture Fellows基金から給付金の形でなされ、また各参加企業から月々のサラリーも支払われます。

Student Investment Fund
UCLA Student Investment Fund (SIF)では、第二学年在籍中の学生から選ばれたグループに対して資金を提供し、株式および債券市場への投資を実践させています。 Price Center for Entrepreneurial Studiesの援助によって実施されているこのプログラムでは、学生グループが、教授陣の指導を受けながら、ポートフォリオ・マネージメント、投資分析、資産割り当て、トレーディング戦略など投資に関するすべての事柄をプロフェッショナル・マネージメントチーム同様に行っています。学生グループは現時点で資産額$1.7millionを有するファンドの運営に係わる管理全般に責任を持ち、また来校ゲストスピーカーによる講演会もアレンジします。なおこの投資から得られた利益はステューデント・フェローシップの資金として活用されます。昨年度は、このなかから5000ドルのフェローシップが10人に対して与えられました。

Management Development for Entrepreneurs (MDE)
このプログラムは、成長発展中の企業を経営するオーナーに対して、カリフォルニア州にある公共事業会社および情報システム会社からより、多くのビジネスを効率よく獲得するために必要なマネージメント・スキルを得る機会を提供しています。フェローはセミナー開催中に各個人からの質問に応じ、また参加者が自分のBusiness Improvement Projectsへ新しく得た情報やテクニックを応用する手助けも行います。
MDEプログラムは年に2度開催され、プログラムの責任者によって通常6,7人のフェローが事前に選ばれています。

Head Start Management Fellows
このプログラムはAnderson Office of Executive Educationが運営するもので、そのファカルティ・ディレクターはPrice Centerのディレクターが勤めています。参加者のマネージメント・スキルを強化し、アントレプレナーとしての能力を高めるようデザインされたプログラムです。毎年夏に2週間にわたって開催され、2つのセッションにそれぞれ40人が参加します。教授の指導のもとMBA学生は選ばれた参加者のHead Start agenciesに基づいてケーススタディを書き上げます。フェローはプログラム・セッションに出席し教授陣を手伝いならが、参加者がManagement Improvement Projectを開発する手助けもします。プログラムの終了時にはこのManagement Improvement ProjectがHead Startディレクターの手で実行に移されます。

Larry Wolfen Entrepreneurial Spirit Award
Larry Wolfen Entrepreneurial Spirit Awardは1993年度の卒業生Larry Wolfen氏に因んで設けられた賞です。アントレプレナーとしての将来性がこの賞の選考基準です。受賞者は必ずしも十分に計画立案されたアイデアを持つ者ではなく、むしろ起業のための新しいコンセプトを探ろうとする好奇心と、そのコンセプトを実現可能なビジネス機会へと発展させる能力とを兼ね備えた人物であることが多いのです。賞は給付金の形をとり、MBAプログラムの1年から2年に上がる際に授与されます。これは受賞学生がアイデアについて探すための調査をしたり、あるいはプロジェクトを進めていく間にかかる生活費を提供しようとの意図があるためです。

Young Presidents’ Organization South Bay Chapter Fellowship
このフェローシップは立派な学業成績を残しまたリーダーシップをとる能力を示したMBA学生に与えられます。そのほかアントレプレナー、新たな富の創造、ビジネス育成へなどに対する本人の興味の度合いも選考基準となります。このフェローシップを得たものは最低1年間この団体の活動に参加することを期待されます。また年齢的には30歳以下でなくてはなりません。各年度に一人づつMBA学生がこのフェローに選ばれています。

UCLA Venture Development Program
このプログラムでプロジェクトマネージャーを勤めた学生には、第二学年に有給のインターンシップで働く機会があります。

デヴァリエ:アンダーソン・スクールで「コーポレート・アントレプレナーシップ」、つまり既存の大企業のなかで新規事業を行うためのクラスが設けられているのは魅力的ですが、これは新たなヴェンチャー企業を立ち上げる場合とどう違ってきますか?

違いはないのです。ただイノベーションを推奨する環境が必要なだけです。ケーススタディ方式の授業を、衛星通信を使い日本の大企業に働く人たちに教えてきました。また欧州、中南米や他のアジア諸国の学生にも教えています。

つまり、いまや衛星を使ってアントレプレナーシップとは何かを教えることが可能な時代なのです。日本の教育機関からこのプログラムに関する質問が届いたならとても嬉しいはずです。

デヴァリエ:企業内起業家として成功を収めている人の特徴は何ですか?大規模な既存企業がイノベーションやアントレプレナー精神を推奨するにはどうするのでしょう?

コクラム:それには管理のやりかたをうまくコントロールすればよいのです。たいて
いの企業では、その社の方針や手続きがイノベーションの足枷になっています。歴史のあるより大きな企業ほど硬直した官僚制に陥りやすく、変化に対して抗う傾向がありますが、アントレプレナーシップという概念自体が変化や、新しさを含むものです。なので、そうした足枷となる官僚制を回避するべく管理のやり方を変えればいいのです。

デヴァリエ:そのような障害が「企業内起業家」あるいは「変化のエージェント」によって克服されるとすれば、いったいどのような経過をたどるのでしょう?

コクラム:それにはまずトップから始めるしかありません。経営最高責任者がそうすることを義務づけなければならないのです。一握りのアントレプレナーはよしんば官僚化した組織のなかでも存在し得ますが、組織全体がよりアグレッシブに起業家精神に富んだものになるためには、やはりトップが手本を示さないことにはどうにもならないのです。

デヴァリエ:すでに確立された企業のなかでは、つぎのどちらの場合がアントレプレナーシップを刺激されやすいと考えられますか。つまり親会社が変身を遂げる場合か、あるいは子会社として新たなヴェンチャーを起こし、新規採用の人材と親会社からの転身組とがそこで共に働くという場合を想定してですが?

コクラム:アントレプレナーシップはトップダウンで義務づけられなくてはなりません。ですから、絶対的に前者、つまり親会社自体の変身がまず必要なのです。組織のなかのごく一部だけを起業家精神に溢れたものにしようとしても、中央に残る官僚制が必ずそうした異質なものを押しつぶそうと事あるごとに邪魔をしてしまいますから、そうしたやりかたでは、実現できないのです。

デヴァリエ:どのような報償システムがあれば、社内でイノベーションがもっともよく奨励されるのでしょうか?

コクラム:パフォーマンスに応じた給与体系です。

デヴァリエ:ビジネスにおける「創造性」とは教えることができるものですか?そうであれば、どのようなやり方で教えるのでしょうか?

コクラム:いえ、それは教えられるといった筋合いのものではありません。しかし、正直に言えば、アントレプレナーシップは例えば「僅か15歳で電球を発明する」といったことではないのです。そうではなく、つまり「実験精神に溢れた思考と振る舞い」ともいうべきもので、これにはその人なりの経験が必要であり、また改善すべき事柄を探し出す能力が問われるのです。高い成長の見込まれるニッチで、何か改善の機会を求めること。アントレプレナーシップは経験に基づく事象なので、年齢的には35-50歳の時に事業を始める起業家が多いのです。

デヴァリエ:鋭いコメントの数々をいただき、まことに有り難うございました。ご存じのように、現在日本ではさまざまな分野で、グローバル経済での競争力を維持するための抜本的な構造改革に取り組みはじめたところで、そうした点からアントレプレナーシップに関する話題は、民間でも政府機関においてもホットなものとなっています。貴兄のコメントはこの国のリーダーたちにとって大変興味深いものだと思います。