インターフェイス・インタビュー
MITスローンスクール大学院入学審査担当ディレクター、ロッド・ガルシア氏






1999年6月

(本記事は、電子メールで行ったガルシア氏に対するのインタビューの前半部分です)

MITについて

さまざまな意味で、MIT(マサチューセッツ工科大学)のMBAは、ビジネスを学ぶのに理想的なプログラムといえる。比較的少人数のクラスにもかかわらず、いっぽう世界で有数の大学のなかにあって優れた知的リソースを有している。また、世界各地からの留学生の割合も多く、カリキュラムは革新的で21世紀のビジネスに対応できるような内容となっている。さらに、ボストンという文化的に豊かで歴史的にも重要な都市、米国の「学問のメッカ」ともいえる地域に存在していることも見逃せない。

ロッド・ガルシア氏について

1988年にMITスローンスクールに加わる。それまではシカゴ大学ビジネススクールで入学審査ディレクターのアシスタントを勤めていた。氏はフィリピン、マニラ生まれ、ビジネス・マネージメントと心理学の学位を持つ。さらにスペインはマドリッドにおいて、スペイン語及びスペイン文学を学ぶ。現在、グラデュエート・マネージメント・アドミッション・カウンシル(GMAC)の委員会代表、ならびに、 コンピュータ・アダプティブ・テスト(CAT)実施へ向けた諮問委員会のメンバーも勤めている。

聞き手のウォーレン・J・デュヴァリエは(株)インターフェイス創始者兼社長である。

デヴァリエ:ロッドさん、インターフェイスのサイトをご覧下さいまして、有り難うございました。このサイトは、アクセスの大部分を日本人の方が占めていますので、内容のほうも日本語で記されています。そこで、今回お尋ねする質問も、ユーザーの方に関わりのもっとも深い分野を中心にしたいと考えております。

まず、昨今の財政危機を目にして、アジア諸国からの志願者が減少すると信じている日本の人もいるようです。が、これまでも私たちはそうではないと考えていました。つまり、景気が下降線をたどっているときには、いっそう多くの人が外国で学ぼう、またその上で将来再び景気が改善した時に、よい就職先を得る機会を増やそうと決断するから、というのがその理由です。ですから、アジアからの志願者数は減少しないと見ているのですが、これを裏付けるような数字はありますか。

ガルシア:当校では、本年度の総志願者数は減少しています。けれども、これは主に国内からの志願者数が減ったためです。いっぽう国外からの志願者は増え、その多くはアジアおよび南米各国からのものでした。

デヴァリエ:かつて、スローンスクールへ留学する日本人学生は主に企業派遣の人が多かったのですが、最近は企業派遣の方と自己資金で留学される方の割合が、同じ程度になってきています。現在目に付くトレンドが何かありますでしょうか。1999年秋に入学する学生のなかで、日本人の 自己資金留学者というのは何パーセントくらいなのでしょうか。

ガルシア:スローンで学ぶ日本人学生の多くは、依然として企業派遣者です。ただ以前と異なるのは、もう同じ企業から5人も6人もいっぺんに志願してくることがなくなったところでしょう。

デヴァリエ:男女均等実施への方策のひとつとして、スローンは他の幾つかのトップ・ビジネススクールとともに、女性向けの特別レセプションの催しに参加していますね。今年この催しは、いつ、どこで開かれますか。日本人の女性が出席するとして、何らかの条件がありますか。

ガルシア:特定の人たちに向けた共同レセプションの予定は、いまのところ国内でも国外でもありません。

デヴァリエ:スローンへ1999年秋に入学する学生のうち、日本人はどれくらいいますか。また、その内訳を男女別、業界別でお教えいただくことが出来ますか

ガルシア:本年は13人の志願者が入学を許可されました。そのうち二人が女性の
方です。また三分の一の方が金融系から、そしてもう三分の一はコンサルティング業界から、残りはその他の分野から、となっています。

デヴァリエ:その13人という数は、全入学者のうちで何パーセントにあたりますか。また過去と比べて、今年入学を許された日本人の数は、絶対数および比率の点からいって多いですか、少ないですか。

ガルシア:全入学者のなかでの比率は下がっています。以前は毎年20人程度いましたから。

デヴァリエ: 1999年度に、全志願者のうちで入学を許可された人の割合はどうでしたか。全体についてと、日本人志願者について、それぞれお教えいただきたいのですが。またこの割合は、過去と比べて、どうですか。

ガルシア: 合格者/志願者の割合では、日本人志願者についてはおよそ13%でした。これは全体の比率とも一致しています。

デヴァリエ:もういくつか数字に関する質問を続けます。
入学許可を受けた人のうち、これを断らなかった人の割合はいかがでしたか。これまでは75%くらいでしたでしょうか。また、スローン入学を辞退した人は、相変わらずハーバードかスタンフォードへ進むのですか。

ガルシア:これについては、今年は77.5%でした。そして日本人学生は85%の方が入学されました。そして辞退者の大多数はハーバードまたはスタンフォードへ行っていますね。

デヴァリエ:世界各国から留学する学生の割合は、今年はどれくらいですか。また、過去と比較してどうですか。

ガルシア:これは 38%で、昨年と一緒です。

デヴァリエ:スローンスクールの規模は現状のままが好ましいとお考えですか、それとももっと大きく、あるいは小さいほうがいいのでしょうか。いまでも、だいたい350人ですよね。

ガルシア:そう、最大350人で、これからもこのままでしょう。

デヴァリエ:大きくしないのは何故でしょうか、需要はたくさんあるでしょうに。景気も良いですし、手を広げるには悪いタイミングではないと考えますが。

ガルシア:スクールの規模を大きくするかどうかというのは、スペースも都合も関係してくることなので。いまのところ設備の点からいって、350人の学生を収容するのが精一杯なのです。クラスのサイズを大きくしようとすると、どうしても施設を建て増しして、また教授・講師やその他の人員の数も増やさなくてはなりませんから。

デヴァリエ:私たちの見るところでは、スローンのエッセイ問題は、全大学院が課すなかでも最良のものに思えます。そもそもカヴァーレターからして、各志願者が自分の経歴や今後の目標を、ちょうどビジネス書類と同じように簡潔に記せるかどうかを試しているようですし、また本人がどれほど世界経済についての知識をもつかも二番目の課題でわかってしまいます。スローンの入学審査委員会では、志願者のエッセイを見るとき、どの点をいちばん重視しているのでしょうか。

ガルシア:こちらの主な仕事とは、本当に立派な実績を持つ志願者と、単によさそうな経歴をもつ人とを選り分けることです。ですから、志願者選定の際には、本人の人柄が当校に相応しく、入学後もさまざまな機会を最大限に生かせるような性格を持っていそうな方を求めているのです。この機会とは学業の上でも、またそれ以外の分野にも存在しています。なかでも、他の一緒に学ぶ人たちに、多くのものをもたらしてくれそうなには方には、とりわけ関心を持っています。

デヴァリエ:来年度(西暦2000年入学をめざす志願者)の応募の締切はいつですか。第二番目の締切に合わせて応募する人は、一番目の応募者よりも競争が厳しく不利だということはありませんか。

ガルシア:まず来年度の締切は次のようになっています。第一回目:1999年12月22日、第二回目:2000年2月2日。また後のお尋ねについてですが、実のところ、締切による競争率の違いそれほどないのです。

デヴァリエ:当方では、大学院留学の準備をすすめる方に対して、英語でのコミュニケーションスキルならびに英語文章読解力の向上に力を注ぐようにアドヴァイスしているのですが。あなたのお立場からは、1999年度秋に入学予定の人たちに対して、いったいどのような準備を勧められますか。スローンには夏期プログラムはありませんよね。日本人の方に向いていそうなサマースクールというのがあれば、お教え願えますか。

ガルシア:近年当方の教育プログラムでは、授業中/外を問わず、チームワークと(自分の考えを述べる)コミュニケーション能力が、ますます重視されるようになっています。そのせいで、英語をマスターすることが尚更大切になり、ある意味でこれまでなかったほど重要になったといっていいかもしれません。これはすでに明らかになっていることですが、入学後に、はじめて出会う学業に集中しながら、同時に英語の力を付けようとする新入生は、良くて問題有り、またしばしば悲惨な状態になっています。そこまでいかないにしても、すくなくとも、言葉の問題でつまづいていては、自分の学問経験の価値をみすみす減じることになりますし、またそれが一緒に学ぶ他の人たちにも悪影響を及ぼしてしまうのです。幸いなことに、ボストンには、入学前のじきに英語をマスターするためのコースを提供している大学がいくつかありますので、そのうちのどれかに通えばいいかと思います。

デヴァリエ:99年秋入学の方向けに、お薦めの書籍あるいは雑誌記事等があれば教えてください。私のほうで思いつくのは、あるスローンスクールの教授が著した組織論についての古典”Managing the Future: Organizational Behavior & Processes”とか、あるいは同じくスローンの教授のひとり、スチュアート・メイヤー氏が書いた”Principles of Corporate Finance”などがありますが。

ガルシア:次のようなものを、学期が始まる前に読まれておくといいかと思います。

“Microeconomics” by Pindyck and Rubinfeld
“MacRoeconomics” by Dornbusch, Fischer, Startz
“Competing by Design: The Power of Organizational Architecture” by Nadler and Tushman
“Managing with Power” by Jeffrey Pfeffer
“Organizational Culture and Leadership” by Edgar H. Schein
デヴァリエ:スローンでは人種や性別毎の入学人数割り当てを行っていませんね。けれども、一般的な意味で、日本人志願者が一緒に評価を受けるグループというのがありますか。あるとすれば、それは「アジアからの志願者」という括りですか、それとも他の諸外国からの学生ということですか。全体のうちで、何パーセントくらいを日本人志願者に割り振っているのか、その大まかな目安があれば知りたいのですが。

ガルシア:すべての志願者と同じく、日本人の皆さんも他の志願者全員と比較して評価を受けています。

デヴァリエ:過去と比べた場合に、入学を許可される日本人の数がずっと少なくなっているスクールも、実際多く存在しているのですが。この減少を捉えて、その理由を、日本の国が不況にあるせいで、もはや米国の関心を失った、その関心低下を反映したものと勘違いしている人もいます。私たちは、そう主張する人に対して、それは事実無根の勘違いだと言っていますが。実際のところ、MBAを目指して激化する競争の理由とは、(1)アジアの他の諸国からの志願者増加、(2) 学生の多様化を目指すスクール側の選択、だと考えていますが、いかがでしょう。

ガルシア:ご指摘の通りだと思います。ところで、そうお感じになるのは、何も日本の方に限ったことではありません。たとえば、スローンへ来ているドイツ人学生のなかは、昔のようにもっとドイツからの学生を受け入れるべきだと考えている人もいたりします。いろんな国の人が、それぞれ似たように感じているのです。

デヴァリエ:当方では、顧客である留学志願者の方に、たとえば、破産してしまった日本長期信用銀行で働いていた人というのは、他の銀行で働く人と同じか、あるいはそれ以上に価値のある経験をしている、とお話ししています。それと同じように、新興経済国やあるいは経済不安に陥った国で働く人というのは、成熟した、または活況を呈す経済社会のなかで働く人と同程度に価値のある経験を積んでいる、とも。
この点に関しては、いかがお考えになりますか。

ガルシア:まったくご指摘の通りでしょう。それぞれの学生の方がスローンへもたらしてくれる各々の経験や、その他諸々のことが、何よりも大切で、勤務先のネームバリューとかいったことはまったく意味がありません。

デヴァリエ:日本人の志願者の方には、授業やその他の活動に積極的に参加して、プログラムに貢献するようにも言っています。これに関して、何かの思い違いでしょうが、自分に長い実務経験があれば、そのままそれがクラスに貢献することになると、そう信じているいる人もいます。授業中のディスカッションの場で、自分の経験を他の人と分かち合わなければ、いくら実務経験があっても、それでは何にもならないということが、こういう人たちはわかっていません。
このことに関しては、いかがですか。

ガルシア:まったくその通りだと思います。

デヴァリエ:ロッドさん、どうも有り難うございました。インターフェイスのサイトへアクセスする日本人の皆さんも、あなたな率直なコメントから得るところがたくさんあるでしょう。この後に予定されている第二部のお話を楽しみにしております。